

2017年2月、スイスのローザンヌで開催された国際体操連盟(FIG)の理事会において、パルクールを2024年パリオリンピックの新種目として追加することが決定されました。この時から、パルクールのオリンピック種目化への具体的な動きが始まったのです。
参考)https://pt-village.com/column/culture/parkour-olympic/
フランス発祥のパルクールは、障害物を飛び越えていくニュースポーツとして注目され、FIGは5月の評議員会で正式な承認を諮る方針を確認しました。渡辺守成FIG会長は「五輪での追加を目指す」と明言し、2024年のパリ大会での実施に向けた期待が高まっていました。
しかし2020年12月7日、国際オリンピック委員会(IOC)の理事会において、パリオリンピックの追加種目としてブレイキン、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの4競技が正式に決定され、パルクールは不採用となりました。この決定により、スカッシュ、ビリヤード、チェスとともにパルクールも見送られることが明らかになったのです。
パルクールは正式競技としての採用は見送られたものの、2024年パリ大会で「デビュー」する機会を得ました。正式競技ではなく、アーバンスポーツとして将来の五輪入りをアピールする場が提供されたのです。
参考)パルクールが五輪「デビュー」へ 正式採用見送りもパリで「お披…
パルクール発祥の地であるフランスのパリでは、コンコルド広場が会場として有力視されており、スケートボードやBMXフリースタイル、新競技のブレイキンが行われる場所で、同じストリートカルチャーを持つパルクールが加わることで、さらに盛り上がりを見せることが期待されました。
日本体操協会のパルクール委員長を務める島田善氏は「国内の環境を整えたい。パルクールの魅力を広く知ってもらうことも大切」と語り、認知度向上の重要性を強調しています。アーバンスポーツの追い風に乗るパリ大会での「お披露目」が、パルクールの未来への大きな一歩になると見られています。
パルクールの公式競技には、主に「スピード」と「フリースタイル」の2種目が設定されています。これらは国際体操連盟(FIG)とパルクールの創始者であるダヴィッド・ベル、シャルル・ペリエールが協力することで確立されたフォーマットです。
参考)RULES
スピード競技では、スタート地点からゴール地点まで障害物を乗り越えながら、いかに速く駆け抜けるかを競います。公式国際大会では最大2.5メートル以上の障害物が配置され、コース全長は約40メートルとなっています。硬質素材の床面・壁面と金属製の鉄棒で構成され、安全性確保のためチェックエリアが設置されています。
フリースタイル競技では、20秒以上45秒以内の演技時間内で、技の難易度(Dスコア)と実施の完成度(Eスコア)の合計点を競います。安全性を最優先としながら、選手の創造性や技術力が評価される種目となっており、障害物の使い方や動きの連続性が重要な評価ポイントです。
参考)パルクールとは?概要や種目・歴史を簡単に紹介!安全な始め方も…
2022年10月に東京で開催された第1回パルクール世界選手権において、日本の山本華歩選手がフリースタイルで銀メダルを獲得し、日本勢として唯一のメダリストとなりました。この快挙は日本のパルクール界にとって歴史的な瞬間となりました。
参考)山本華歩公式ページ href="https://oo87fr.com" target="_blank">https://oo87fr.comamp;#8211; 女性パルクール実践者/パ…
山本選手は1990年生まれで、18歳の大学在学中にパルクールと出会い、2017年には日本人女性として初めてパルクールコーチの国際資格「ADAPT Level1」を取得しました。2018年のアジア大会フリースタイルでは優勝を果たし、その実力を証明しています。
参考)過激ではない。世界選手権2位・山本華歩に聞くパルクールの本質
世界選手権でのフリースタイル種目において、山本選手は上位5人の中で難易度は最下位でしたが、安全面では2番目の評価を受けました。「とにかく、技を失敗しない。余分なステップをすることなく最後まで通せたことが一番の勝因だった」と本人が語るように、確実性の高い演技が銀メダル獲得の鍵となったのです。
雑誌『Tarzan』のインタビュー記事:世界選手権での山本華歩選手の演技詳細と、パルクールに対する哲学について深く語られています
パルクールは近年、日本のエンターテインメント作品でも注目を集めています。2022年4月に配信されたアニメ映画『バブル』は、パルクールを題材とした作品として大きな話題となりました。
参考)https://pt-village.com/column/other/bubble/
『バブル』は『進撃の巨人』で知られる荒木哲郎監督がメガホンを取り、WIT STUDIOが制作を担当した作品です。プロデューサーには『君の名は。』の川村元気氏、脚本には『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄氏が参加するなど、豪華な制作陣によって描かれました。
作品では、日本初のパルクールアスリートであるZEN氏がパルクール監修を担当し、実際に人間ができる動きをアニメに落とし込むことにこだわりました。「空中で何回も回転し、何回もひねるような凄すぎて現実離れした動き」は行われず、本物のパルクールの動きが丁寧に描かれている点が大きな見どころとなっています。
物語は人魚姫をテーマにしており、低重力となった東京を舞台に「バトルクール」と呼ばれるパルクールのフラッグレースが繰り広げられます。色鮮やかで滑らかな美しいアニメーションと、圧巻のパルクールパフォーマンスの融合が、アニメファンとパルクール愛好者の両方から高い評価を受けました。
参考)Netflixアニメ映画『バブル』“虚淵節”光る爽やかなアク…
映画『バブル』の詳細解説:パルクールの観点から見た作品の魅力や、実際のトレーサー(パルクール実践者)による感想が掲載されています